沖縄で過ごした小学生の頃の話です。
ある日、父と母がけんかをした。
すごくヘコんでいる母を残して学校へ行くのは子供心にすごく心配だった。
でも家に帰ると母はすごく上機嫌で唄うように私にお帰り、と言った。
なんだか魔法にかかったみたいに不思議そうな顔をしている私に
いたずらっ子のような笑顔でこう言った。
「はい、お土産。お父さんには内緒よ。」
母がくれたのはネーム入りのキーホルダーと
久米島からのエアチケットの半券だった。
「あんまり頭に来ちゃったから、へそくりでぱーっと久米島行ってきたの。
そしたらもう怒ってるのがばかばかしくなっちゃった。」
楽しそうに笑って母は私の頭をなでてくれた。
一周忌の法事が終わり、
みんなが去ったお墓の前でそんなことを思い出していた。
いつか相方とけんかするときがあったら
私も美枝子さんみたいに素敵な憂さ晴らしができるかな。
でもここからじゃ久米島は遠すぎるね。
空に向かって問いかけてみる。
大好きだよ、お母さん。
美枝子さんの思い出
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